モリタヤスノブログ3.0

森田泰暢のブログです。福岡大学商学部の教員でヒマラボの代表理事でもあります。思えば遠くへ来たもんだ。

「ヒマラボ」という社会人・学生混成の研究的コミュニティを立ち上げた

今日は私が主宰する「ヒマラボ」というコミュニティについてお話したいと思います。

Keywords: Yocto-Knowledge、研究的活動、遊び、暇

ヒマラボとは

ヒマラボとは社会人と学生が混ざり、月1度くらい研究「的」な活動をするコミュニティです。暇な時間を活かして研究的なことやろうというですね。 https://www.facebook.com/groups/HimaLabo/

第2回、第3回に参加してくれた山田さんは「学生も社会人も、ヒマな時間に研究して究極の遊びやろうゼっていう場所」と表現してくれています。
note.mu


2017年12月に始め、今まで4回開催。社会人-学生織り混ざって自由研究のように自ら持ち込んだテーマで研究発表して議論して。「謎解きゲーム」の研究を始めた学生は実際にゲームを作って、参加者に解いてもらいながらゲームのポイントを探求したり。自分が興味あるテーマについて活動してもらっています。
chitabea.hateblo.jp

きっかけ

ヒマラボを始めようと思ったきっかけは、子どもが産まれたことです。守りたい存在がいるけれども、自分の方が早く死ぬ。そんなことを考えたときに、遠い未来まで続く社会を良くすることに貢献したいと思うようになりました。
「良い社会」の定義も色々とありますが、私は「好奇心を毀損されない社会」がいいなと考えています。何か興味あることが産まれ、誰かに伝えたときに「つまんない」「どーせ無理だよ」ではなく、「良くわからないけど一回詳しく調べてみたら?」「もう少し詳しく教えてよ」「一緒に調べてみる?」と言える世の中ですね。

そこで、テーマは何でもいいので、社会人も学生も好奇心に基づいて研究的な姿勢を持てるような場やそういう人たちを増やせる場を作っていきたいなと考えたわけです。

勉強と研究、社会人と学生を混ぜる。

「教科書を読むのが『勉強』だとしたら、教科書を創るのが『研究』」と落合陽一さんは話されていました。
世に勉強会は溢れていますが、ある程度知が体系化されるのを待ってからそれを獲得するのでは時間がかかります。海外で研究され、書籍化され、翻訳され、となると数年経ちます。社会変化が激しいこのご時世、一般化された理論構築の重要性は認めつつも、実践に対してリサーチマインドを持って臨み、新たな知や自己理論を構築する姿勢が社会人にはより重要になります。
リサーチマインドとは何か?|Seiji Bito|note

また私は商学部に所属していますが、学生に話を聞くと「本当は文学部に行きたくて」という声もあったりします。「本当はこういうことに興味があるんだけど、私は●●学部なので、そういうことは深められないと思っていて・・・」みたいな声も。何だか自分についたラベルを気にして好奇心を隠してしまうのは、もったいないと感じています。心の底にある好奇心を解放して、興味のあることへの研究的な活動をしてほしいなと思うことがたくさんありました。

社会人にリサーチマインドを持ってもらえ、学生の好奇心も活かせそう。それが社会人と学生とを混ぜて実施しようと考えた背景です。

小さな知的生産、個人がテーマを持つ

ヒマラボでは「長野県の女子短大生はスマートフォンをどう利用するか」のような、極めて文脈依存的で学術的新規性が無いものであっても、新たな知的生産物として愛でたいという思いがあります。
小さいけど新たに生まれた知識をヒマラボでは「Yocto-Knowledge」と名付けました。「yocto」は国際単位系 (SI) における接頭辞の一つで、基礎となる単位の 10の−24乗です。
非常に小さくとも新たな知が生まれたこと自体を喜びたいんですよね(もちろん大きければ大きく喜びます!)。

「”誰もが”目的感を人生の中で持てる世界を創り出すこと」とFacebook創業者のMark Zuckerbergはハーバード卒業式のスピーチで語りました。個人個人がテーマを持ち、小さくとも知的生産を行っている世界をヒマラボは目指したいです。

研究「的」活動

私はヒマラボの中で意識的に「研究的活動」という言葉を使います。なぜ「的」なのか。
それは個人的なこだわりにしか過ぎませんが、ヒマラボではYocto-Knowledge創出は大歓迎なので、文脈依存的で学術的新規性が無くても問題ありません。
ただ研究活動というとちょっと言い過ぎな気もするので「研究的活動」という言葉を使っています。

研究となるとやはり「学術的新規性があり、創造的で、明確なエビデンスとロジックを基に、分野の理論的発展をさせること」を満たす必要があると考えるためです。ここまでやるとグッと活動のハードル上がりすぎますので、ここまで厳密にやらなくても、ということで研究「的」活動なんですね。

研究とは究極の遊び

序盤で山田さんが「学生も社会人も、ヒマな時間に研究して究極の遊びやろうゼ」っていう場所」とヒマラボを説明してくれていますが、なぜ究極の遊びなのか。

研究の特徴は

・終わりがない
・徐々にレベルが上がる
・わかることが増える
・好きでやっている

です。

これは極めて「遊び」に近い要素を含んでいます。誤解を恐れず言えば、研究は究極の遊びであると考えるわけです。
ヒマラボでは研究的活動を遊びの一貫だと捉えています。楽しく、やらないとですね。

誰もが研究者的である世界へ

Eric Hofferという方をご存知でしょうか。
www.sakuhinsha.com

日雇いの労働者をしながら研究に打ち込み、カリフォルニア大学の講師もされた在野(大学や研究所には所属しない)の研究者です。彼の言葉で最も好きなものは下記の通りです。

「本を書く人間が清掃人や本を印刷する人よりもはるかに優れていると感じる必要がなくなるとき、アメリカは知的かつ創造的で、余暇に重点を置いた社会に変容しうるでしょう」

在野研究のススメvol.03 : エリック・ホッファー - En-Soph

誰もが研究者でその成果を発信できている社会ってクリエイティブだよね、ですね(しかも「余暇」という言葉がちょっとヒマラボと重なっています)。研究は大学や研究所にいる特定の人材のみが許されている行為ではないわけです(資金や装置の有無もあるでしょうけども)。

AIやロボット、自動運転などなど。人間には少し暇な時間が生まれるかもしれません。その時間を誰もが新たな知的生産に使い、好奇心とモチベーションに溢れる社会になるといいなと考えてヒマラボを始めました。


2018年度はヒマラボ研究員という制度も作りまして社会人2名、学生2名の4名を選びました。月1回自分のテーマをもとに研究的活動に臨んでもらいます。
もちろんディスカッションのみ参加したい、たまにテーマをLTしてみたい、こういう活動に触れてみたいという方々、ウェルカムです。
ヒマラボ研究員のうち1名は小田原からリモートで参加しますので、遠方からももちろん参加してください。


ヒマラボに関連したことは他にもたくさんあるのですが、今回はこの辺りにしておいて、また記事を書いていきたいと考えています。


日本や世界に広がって、世界中の人が今、何をテーマとして持っているのか。好奇心のマップが作れるといいなあ、なんて妄想したりしています。リサーチマインドと言いますか、リサーチャーシップと言いますか、そういったものが溢れた街をどこかで作ってみたいものです。研究所勤務の人が多いという意味ではなくて、研究者的市民がたくさん住む街。


ちなみに私のTwitterモリタヤスノブ(@domino613)さん | Twitter 、ヒマラボのFacebookグループは https://www.facebook.com/groups/HimaLabo/ です。


よろしくお願いいたします。お問い合わせなどあれば ymorita@fukuoka-u.ac.jp までいつでもご連絡ください。TwitterのDMやFacebookメッセンジャーでももちろん構いません。


2018年度も楽しんでまいります!