モリタヤスノブログ3.0

森田泰暢のブログです。福岡大学商学部の教員でヒマラボの代表理事でもあります。思えば遠くへ来たもんだ。

思考のクセづけにはペルソナ作りがいいかなと

先日非常勤講師での授業の感想を整理した記事をアップしました。


domino613.hateblo.jp

商品企画の演習をマーケティングのフレーム(STPと4P)で行った場合とUXデザイン(HCDと言うほうがいいんでしょうか)のフレームで行った場合との学生のとらえ方の違いですね。

個人的に興味深かったのは下記の2つ。

【やりやすい−やりにくい】

・STPと4Pでのターゲットのように30から40代男性と幅広く見渡せるほうがやりやすい。

・STPと4Pのほうがざっくりしていて考えやすい。UXDのほうが難しく、本当にその人のためを考えることが多いと思った。

・業界や市場の特徴から考えるほうが理解しやすかった。

・4Pに当てはめていくという点ではスムーズに進んだ。ペルソナを作るほうがニーズにしっかりあう企画になると感じた。

・4Pのほうはそれぞれの関係が図式化されて表現されるのでわかりやすい。UXDはストーリーで文をしっかり読むことで理解が深まる。どちらもわかりやすさはある。

・STPと4Pはターゲットの幅が広い分いろんな考え方や価値観が生まれてくるし、その立場に立とうとしてもたくさん考えが生まれすぎて混乱する。幅が狭いほうが改めてユーザーにも質問ができ、より欲しいとか使ってみたいと思える商品ができるのではないかと思った。
その人になりきって想像するのはとても難しいと思った。特にターゲットが自分とは年齢層など離れている場合に。

【集団−個人】

・STPと4Pは集団に注目した商品企画、UXDは個人に注目した商品企画だと思った。STPと4Pのほうは、ある集団に企画をしてもユーザーに届かなければ意味が無いと感じ、UXDの商品企画はユーザーの心をキャッチしても、その個人に属する集団が少数派であれば少し意味がないように思えた。

・STPと4Pのほうはターゲットはこういうことを気にしている集団のため、こうしていくと考え、4Pの相互作用など考えるものだったと思う。UXDはよりターゲットについて細かく知り企画していくため、1人1人の性格を重要視しているように感じた。そのため、性格や体験を細かく聞いて考えていくので時間もかかり難しかった。

・STPや4Pの考え方はターゲットはある程度絞っているものの多くの人に関心を持ってもらうことを考える必要があると感じた。UXDのほうはある特定の対象者に対してなので考えやすかった。

・STPや4Pは集団。UXDは1人の人格に対して。細かく絞って考えるほうが考えやすかった。


STPや4Pで進めるのは比較的簡単で、ターゲットは「集団」であると捉えている人が多いかなぁという感じ。

実際の商品企画担当者ではない学生ですので、教育的な側面から見た際にいろいろ考えさせられました。


学生に「若者向けの商品作ってください」というお題を出した時に「若者だし、ゆるキャラ好きなんじゃないの?」「やっぱりLINEやTwitterに流して伝えなきゃね」「濃厚。味は濃厚なほうがいいよ。若いんだし」といった議論がなされて、それを混ぜたアイデアが出てきます。
そして「ターゲットである最近の若い人は~」みたいな話を中間報告的なプレゼンで聞いた後に「で、若者である君たちはその商品買うのね?例えばLINEなんかでその商品が流れてきたら」と問いかけると、全員沈黙してしまうみたいなことがよくあります。

「集団」としてターゲットをとらえている以上、誰かに向けて作っているようで、実は誰にも向けて作っていないってことが起きてるんでしょうね。


他学部の先生からもコメントを頂きましたが、STPや4Pは当てはめていくことで情報整理ができるので確かに「簡単」であり、「できた」と感じるかもしれません。ただ、そうであるがゆえに思考も浅いところで止まりがちのように思えます。良いアイデアも出ないし、思考力も深まらない(ストーリーも描きづらい)。これは学生が悪いのではなくて、そうデザインしてしまっている側の問題でしょうけども。


ペルソナ作りのほうが対象に迫り、色々と考えることが多いと感じた学生が多そうでした。まずインタビューなどからしっかり個人像を作り上げるところまでの思考の深さを身に着けてからでないと、「20代の●●系男子」みたいな集団的ターゲットを対象とした議論にも深みが出ないんじゃないでしょうか。

ペルソナ設定から考えていくと(複数のペルソナ設定してから始めたりはしますが)、いくら典型的なユーザーとはいえ、たった一人の像を想定して商品を考えることに対して不安を口にされることもあります。しかし、思考のクセ付けという点ではやはりペルソナ作りをしっかりやる意義はありそうです。


ペルソナ作りのプロセスのように個人像を作りあげるトレーニングをした後でSTPや4Pというフレームワークを使ったときに、思考の変化がどう表れてきそうか。また学生がトライしてくれる機会があれば色々感想や考えを聞いてみたいなと思います。


プロセスなどをまとめて投げかけるとコメントとかもらえていいですね。
ブログまたちゃんと書いていこう。いろいろ発想も刺激されるし、研究の種にもつながるかもしれないし。